【図解】実況LIVE・マーケティング実践講座

想定読者

就活生~入社3年目

得られるスキル・知見

マーケティングの基本概念について知ることができる
優れた(伝統的な)マーケティングの事例(事例は古い)について知ることができる
ビジネス現場で使うレベルのマーケティングリサーチ手法について網羅的に知ることができる

この本のポイントは

  1. マーケティングとは”売れるための仕組みの事である。
  2. マーケティングを成功させるポイントは顧客中心主義、長期視点、一貫性である。
  3. それを可能にするためには、セグメントを切って、ターゲットを絞って、競合よりユニークなポジションを取って、適切なマーケティングミックス(4P)を設計して、一貫性をもって実行する事である。

図解

 

解説&感想

須藤 美和さんは、東大院卒、博報堂、アーサー・アンダーセン(アクセンチュアの前身)を経たのち、シュローダー・ベンチャーズに参画し、ベンチャー企業投資育成業務に携わられ、その後ベイン・アンド・カンパニーに参画し、同社パートナーとして現在もご活躍中の方です。

内容は、マーケティングについての基本概念、実践手法、事例を1冊にコンパクトにまとめています。これ1冊で一旦マーケティングの概要は掴める非常にお買い得な本です。(笑)
特に、マーケティングリサーチの手法は現場レベルではこの内容で必要にして十分な上、少し古くはなりますが事例までついているため、非常に納得感があります。
入社間もない若手社員は一旦これでいいでしょう。
(但し、最近流行のデジタルマーケティングについてはこの本ではカバーできない為、そういう職業に携わっている方向けには、「新しいアナリティクスの教科書」をお勧めします。乞うご期待)

なぜ、マーケティングを若手社員が学ぶ必要があるか。
それは、顧客起点での経営の必要性がますます高まっている昨今では、マーケティング的な発想でのビジネス運営が避けて通れなくなっているからです。
これから仕事を始めようとする若手社員の人にはピンとこないと思いますが、ビジネス現場ではWebとスマホがパワーを顧客に持ってこさせたというビジネスストーリーが大きなトレンドになってます。
裏を返すと、それ以前のビジネス書はいささか顧客視点を欠いている点に注意です。
その時代の本に没頭していると、気付かないうちに事業者視点でモノを見る方に偏ってしまうため注意です。

本書の良いところは、STPや4Pといった教科書的な手法を、しっかりと意味は含有しながらも、図解や平易な日本語、事例を添える等できるだけわかりやすく解説をしようと心を砕いている点です。
その試みは奏功しており、テーマの広さ、深さを担保しながら読書量をできるだけ減らすという離れ業に成功しております。
因みに、あまりにもわかりやすいため、読んだだけでできる気になってしまう点が弱点と言えば弱点です(笑)

私がこの本と出会ったのは、プロジェクトワークで初めてマーケティング系プロジェクトにアサインされた時でした。
コンサルとは、やったことないプロジェクトにいきなり配置されて、専門家面しなくてはいけない職種です。
相手は、マーケティング歴15年というクライアントです。
それはもうテンパってマーケティング関連書籍を読み漁りました。
その中で、一番理解が進んだ上、プロジェクトワークでも役立ったのが本書です。
当たり前のように、マーケティング的なモノの見方がインストールされていないととてもじゃないけど太刀打ちできなかったとホッとしたのを覚えています。

それから時代は流れて5年経ちましたが、マーケティング的視点、つまり顧客起点での事業運営、サービス提供の重要性は益々進んでいると痛切に感じます。
それどころか、今の時代は”競合”という言葉自体死後になりつつあり、いかに顧客を理解してアンメットニーズを満たすかのゲームになっていると言っても過言ではなくなってきてます。

繰り返しになりますが、本書の紹介するマーケティングは幾分古いです。
一方で、誤解してはいけないのはマーケティングの基礎概念の重要性は全く衰えているわけでは事実です。
私はビジネスの現場でマーケティングとセールス、営業、広告宣伝、広報の判別がついていない人をたくさん見てきました。
理由の一つに、マーケティング手法が複雑になってわかりにくくなっている点と、経営と深く結びつきすぎてどんな業務にも顔を出してくるようになった点が挙げられると思います。
その一方でマーケティングの方は待ってはくれず、手法はさらに先鋭化しています。
最近では、コンセプチュアルなブランド構築問題とAIによるマシンライクな個客単位のサービス最適化問題とに分派し、それぞれが独自の進化=複雑さを獲得しています。
マーケティング手法も技術(特にアドテク)も一層複雑化してきている昨今では、本書の有用性は全く色あせることないどころか、むしろ基礎概念を短時間でインストールできる本書の価値はますます高まっていると感じます。

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